【保育料無償化】いつから始まる?いくらお得になる?

【保育料無償化】いつから始まる?いくらお得になる?

幼児教育・保育の無償化については、段階的な取り組みが行われてきました。

2018年現在、第2子は半額、第3子以降は無償となっています。※1 それが今回の閣議決定で、大きく前進しました。

《2018年5月31日に政府方針が更新されました。それを受けて、期間や対象範囲なども修正しています。※7

 

いつから無償に?

2018年5月に発表された具体的な内容は、以下の通りです。※2

【いつから】

2019年4月から一部をスタートし、2019年10月から全面的に実施

【何の】

幼稚園、保育所、認定こども園の保育料 (認可/認可外保育園どちらも対象)

※ただし、認可外については市区町村の「保育認定」を受けた世帯のみ

※幼稚園は月2.57万円まで

【だれが】

0~2歳児は、世帯年収250万円未満の住民税非課税世帯

3〜5歳児は、親の所得に関係なく全員

保育料が無償化するのは2019年10月から

2019年10月から全面的にスタートの予定ですが、5歳児についてのみ2019年4月から無償化されるようです。

よって、生まれ年度で言えば

  • 2013年度生:2013年4月2日~2014年4月1日生まれ 5歳児クラスの4月から1年間
  • 2014年度生:2014年4月2日~2015年4月1日生まれ 4歳児クラスの10月から1年半年間
  • 2015年度生:2015年4月2日~2016年4月1日生まれ 3歳児クラスの10月から2年半年間
  • 2016年度生:2016年4月2日~2017年4月1日生まれ 3歳児クラスの4月から3年間

が該当するようになります。

2016年度以降生まれからは、3年間無償となります。

ただし、10月という年度途中での無償化スタートとなるため、実際の保育料の徴収がどのように変更されるのかは不明です。

【なんのため】

  • 少子化対策
  • 幼児教育の平等化

政府によると、20~30代の若者が子どもを持つことに消極的な理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」だそうです。

子育てと仕事の両立や、子育てや教育にかかる費用の負担が重いことを少子化問題の一因と考え、保育料の無償化でそれを軽減しようと考えています。

さらに、幼児期の教育が重要なこともあげられます。

ある研究結果によると、就学前に高い教育を受けている場合は、受けていない場合と比べて、所得が高かったり、生活保護受給率が低かったりという効果が認められているため、先進国でも幼児教育(3~5歳)は無償化しているところが多いです。

認可外はどうなる?

保育無償化の政府案が出た当初、大きく批判されたのが「認可外保育所は無償化されない」という点でした。

この批判を受けて政府は、認可外の場合でも助成が受けられることにしました。 認可外については、市区町村の保育認定を受けた世帯のみを対象とし、保育料の全国平均である3万7,000円を上限に補助される予定です。

サービス内容ごとにさらに細かく見てみましょう。

認可外の無償化(保育の事由あり) 認可外の無償化(保育の事由なし)

・認可外保育施設、自治体独自の認証保育施設、ベビーホテル、ベビーシッター及び認可外の事業所内保育などは月3.7万円まで無償

・幼稚園の預かり保育(一時預かり)も、幼稚園保育料の無償化上限額(月2.57万円)を含め月3.7万円まで無償 →ただし、専業主婦家庭など保育の認定事由に該当しない子どもは無償化の対象外

・就学前の障害児の発達支援(いわゆる障害児通園施設)無償

・延長保育や病児保育は対象外

・入園料やスクールバス代、行事費などの保育料以外の雑費についても対象外

となる予定です。いずれも正式決定ではなく、検討会でこのような方向で進めるという段階です。

子どもの保育の認定事由に該当するかどうかで大きく異なってきますので、ご注意ください。

すでに無償の自治体

保育料が無料になっている都道府県、市町村一覧

国の決定に先行して、すでに保育料が無償化している自治体もあります。

WEB上で施策が公開されており、調査できただけでも以下の通りです。※3

保育料が全面無償化

・兵庫県南あわじ市、三木市 ー満3歳以上(南あわじ市は給食費負担あり)

・兵庫県相生市 -市内の公立幼稚園を利用する場合

・兵庫県伊丹市 -4~5歳まで  

第2子以降の保育料が無償

・北海道北見市、札幌市 -3歳未満まで

・富山県氷見市 -1歳以上から

・東京都港区 -認可保育園に兄姉が在園している場合

・神奈川県中郡大磯町 -1号認定:満3歳から小学校3年生までの範囲内にある子どもが複数人いる場合

・茨城県北茨城市 -1号認定:小学校3年生までの範囲内にある子どもが複数人いる場合

・山梨県 -3歳未満まで

・岐阜県揖斐川町 -特になし

・兵庫県明石市  ー特になし

・広島県山県郡安芸太田町 -特になし 幼稚園は給食費も含み無償

・香川県高松市、観音寺市 ー認可保育園に兄姉が在園している場合

・高知県香南市 -認可保育園に兄姉が在園している場合

・長崎県島原市、雲仙市 -特になし

・長崎県東彼杵郡川棚町 -認可保育園に兄姉が在園している場合

無償化が決定(2018年度から実施予定)

【第1子から無償】 ・秋田市

【第2子以降無償】 ・秋田県 ・群馬県渋川市 ・神奈川県鎌倉市 ・和歌山県

 

  条件付きの場合がありますので、詳しくは各自治体へ確認をしてみてください。

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チェックポイント

保育料無償の条件  

「私が住んでいる市では保育料は無償じゃないのに、隣の市に住んでいるママ友は無償らしい!」というのはよく聞く話です。

なぜ、自治体ごとに無償化策が異なっているのでしょうか?

それは、助成内容を各自治体で決定しているからです。

2015年4月から国が打ち出した「子ども・子育て支援新制度」では、特定教育・保育施設等の保育料を、国が定める基準額(上限額)の範囲内で自治体が定めてよいことになりました。

そこで、特に少子化が進むなどして積極的に人口を増やしたいと考える自治体は、保育料について独自に優位性をもたせるようになりました。

しかし、「無償」と一概に言っても、実は細かなチェックポイントがあります。

例えば、

・所得制限はあるのか?

・何歳から何歳までが対象となるのか?

・1号認定児/2・3号認定児で待遇は異なるか?

・最年長子が何歳の範囲で多子計算するか?

・対象保育施設は認可だけか?認可外もOKか?幼稚園だけか?

・給食費は保育料の対象として無償になるか?

などです。先にあげた自治体独自の無償化策にも、実は様々な条件が付いている場合があります。

条件に当てはまらない場合は、無償化の対象になりませんので、しっかり確認をしてみてください。

また、2019年10月以降に全国で無償化が実施されれば、自治体の独自策はなくなることになります。

よって、現在無償化に使われている財源はその他の子育て支援に当てられることが予測されます。今まで通り子どもや子育て世帯に優しい取り組みが行えるかどうかは、今後の各自治体の政策にかかっています。

無償になるといくらお得?

現在、子ども支援で他にも無償化されているものに、医療費があります。こちらも、何歳までお金がかからないかが自治体により異なっています。

大きく分けて助成対象年齢は「3歳未満」「未就学まで」「小学校卒業まで」「中学校卒業まで」「高校生(18歳年度末)まで」というように、かなり幅があります。  

 

保育料・医療費が無償の場合に、子どもの養育費がどれだけお得になるかを見てみましょう。

兵庫県明石市を例にします。

明石市は保育料が「第2子以降無償」で、医療費は「中学校卒業まで無償」です。

子どもが3人いた場合、明石市が試算した養育費の差は表の通りです。  

 

【夫婦共働きで3人子どもがいる場合】※4

  明石市 独自の補助がない市
保育料 医療費 保育料 医療費
長男 約301万円  0円 約301万円 約56万円
長女 0円  0円 約199万円 約56万円
次男 0円  0円 約199万円 約56万円
合計       約301万円       約867万円

 

【妻は専業主婦で3人子どもがいる場合】※5

  明石市 独自の補助がない市
保育料 医療費 保育料 医療費
長女 約19万円 0円 約19万円 約56万円
次女 0円 0円 約10万円 約56万円
長男 0円 0円 約10万円 約56万円
合計       約19万円         約207万円

保育料と医療費が無償の場合、共働き世帯で566万円、専業主婦世帯で188万円も負担が減ります。

保育料だけ見ても、第2子から無償になれば、共働き世帯においては398万円のお得になります。

無償化への課題

無償化は、親にとってみれば家計が助かり、子どもにしてみれば教育がきちんと受けられるので、良いことであることは間違いありません。

しかし、無償化をスタートするにあたっては、クリアできていない課題がいくつかあることが、問題視されています。

待機児童

すでに無償化している自治体でしばしば起こっているのが、待機児童の問題です。

例えば、先に例をあげた兵庫県明石市では、2017年10月1日時点の待機児童数が全国ワースト6位(653人)※6となっています。

無償化されていることが子育て世代に人気を集め、子どもの数が急激に増えたため、保育の受け入れ体制が整っていないことが理由と考えられます。

このように、子育て支援がしっかりと行われている自治体は、待機児童数が多いというネガティブな側面もあることを覚えておく必要があります。

政府は、2020年度までに32 万人分の保育の受け皿整備を行うと宣言はしていますが、保育士数の減少などもあり、問題の解決はすぐには難しいと思われます。

格差拡大

先に述べたように、2017年の閣議決定では、認可外保育が有償のままであることが問題視されました。

2018年5月の発表で、認可外であっても市区町村の認定があれば、3万7,000円を上限にした助成が受けられるようになりました。

認可外は一般的に、認可保育所より保育料が高額になりますが、待機児童になった場合や両親の働き方によってはやむなく認可外にしか預けられないということが起きます。

補助上限額でカバーできない保育料は今まで通り自己負担となり、完全無償化世帯との差はどうしても残ってしまいます。

子どもに平等な教育の機会を与えるのであれば、世帯間の所得格差の部分もクリアしておかなければなりません。

働き方はどのように変わる?

保育料が無償化することで、私たちの働き方はどのように変わっていくのでしょうか?  

 

・認可外に入れるくらいなら、幼稚園入園まで自宅保育で待つ人が増える?

・無償であれば、幼稚園より長時間預かってもらえる保育所に預ける人が増える?

・基本保育料が無償になる分、延長保育料を支払って正社員で働く人が増える?

・所得制限を気にしていた人も、気にせずキャリアアップにまい進できる?  

 

などの働き方の増減や人々の考え方の変化が考えられます。

子どもがいるからパートでしか働けない、女性だからキャリアアップができない、所得を考えると子どもはたくさんは持てない、など今まであきらめていた働き方やライフプランも選択できるような将来になるでしょう。  

 

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 [註釈]
※1 生活保護世帯やひとり親世帯で市町村民税非課税世帯では、第1子から無償。子どもの年齢制限や認定区分によるカウント方法の詳細については「子ども・子育て支援新制度なるほどBOOK(平成28年4月改訂版)」 参照

※2 新しい経済政策パッケージについて 参照

※3 2018年4月現在の各自治体ホームページ 参照

※4 市民税の所得割額父29万円、母10万円。期間中、所得は変わらないものとする。子はすべて3歳差、保育所は7月入所。現行制度で0歳から3人の子育てを行った場合。保育料は平成28年度明石市の保育料で試算。医療費は平成25年度国民医療費の概況(厚生労働省)より明石市試算。

※5 市民税の所得割額29万円。期間中、所得は変わらないものとする。現行制度で0歳から3人の子育てを行った場合。保育料は平成28年度明石市の保育料で試算。医療費は平成25年度国民医療費の概況(厚生労働省)より明石市試算。 ※4,5ともに「子育てするなら、やっぱり明石」 参照

※6 厚生労働省「平成29年10月時点の保育園等の待機児童数の状況について」 参照

※7 内閣官房「幼稚園、保育所、認定こども園以外の無償化措置の対象範囲等に関する検討会」 参照